吾妻鏡

三

寿永三年〈○元暦元年〉四月六日甲戌、池前大納言、〈○平頼盛〉並室家之領等者、載平氏没官領注文、自公家被下雲雲、而為酬故池禅尼恩徳、申宥彼亜相勅勘給之上、以件家領三十四箇所、如元可為彼家管領之旨、昨日有其沙汰、令辞之給、此内於信濃国諏方社者、被相博伊賀国六箇山雲雲、
池大納言沙汰
走井庄〈河内〉 長田庄〈伊賀〉 野俣道庄〈伊勢〉 木造庄〈同〉 石田庄〈播磨〉 建田庄〈同〉
由良庄〈淡路〉 弓削庄〈美作〉 佐伯庄〈備前〉 山口庄〈但馬〉 矢野領〈伊予〉 小島庄〈阿波〉
大岡庄〈駿河〉 香椎社〈筑前〉 安富領〈同〉 三原庄〈筑後〉 球〓臼間野庄〈肥後〉
右庄園拾七箇所、載没官注文、自於院所給預也、然而如元為彼家沙汰、為有知行勤状如件、
寿永三年四月五日
池大納言沙汰
布施庄〈播磨〉 石作庄〈同〉 六人部庄〈丹波〉 兵庫三箇庄〈摂津〉 熊坂庄〈加賀〉 真清田庄〈尾張〉 服織庄〈駿河〉 宗像社〈筑前〉 三箇庄〈同〉 国富庄〈日向〉
已上八条院御領
麻布大和田領〈河内〉 諏訪社〈信濃被相博伊賀六箇山了〉
已上女房御領右庄園拾陸箇所注文如此、任本所之沙汰、彼家如元、為有知行勤状如件、
寿永三年四月六日
五月廿一日戊申、武衛被遣御書於泰経朝臣、是池前大納言、同息男、可被還任本官事、〈○中略〉内々可被計奏聞之趣也、大夫属入道書此御書、付雑色鶴太郎雲雲、六月一日戊午、武衛招請池前亜相給、是近日可有帰洛之間、為餞別也、〈○中略〉次有御引出物、先金作剣一腰、時家朝臣伝之、次砂金一裹、安芸介役之、次被引鞍馬十匹、其後召客之扈従者、又賜引出物、武衛先召弥平左衛門尉宗清、〈左衛門尉季宗男〉平家一族也、是亜相下著最初被尋申之処、依病遅留之由、被答申之間、定今者令下向歟之由、令思案給之故歟、〈○中略〉此宗清者、池禅尼侍也、平治有事之刻、奉懸志於武衛、仍為報謝其事、相具可下向給之由被仰送之間、亜相城外之日、示此趣於宗清処、宗清雲、令向戦場給者、進可候先陣、而倩案関東之招引、為被酬当初奉公歟、平家零落之今、参向之条、猶称恥存之由、直参屋島前内府雲雲、 五日壬戌、池前大納言被帰洛、武衛令辞庄園於亜相給上、逗留之間、連日竹葉勧宴酔、塩梅調鼎味、所被献之、又金銀懸数、錦綉重色者也、