[p.0497][p.0498]
武野燭談
十九
酒井雅楽頭忠清評並水野周防守事
一年水野周防守忠増は、大御番承りし頃、いつの時に歟、組の何某遅参し、西の丸御門〆らるゝ所へ参り懸り、いまだ扉は立て貫木お指ざりしに、走り入んとせられたるお、御目付某、人は軽し、法は重しとて、厳敷咎めて押返し、閉門に申行ひける、其御目付、あやにくも又周防守が番之節遅参して、暮六つの大鼓打仕廻うて後に、西之丸寝番に登城しける、周防守、与力同心に下知しけるゆへ、通らんとしても聞入ず、周防守へ通達しければ、中々聞入ず、役義お照して通らんとせば、後程いよ〳〵重かるべしと、是非なく帰参して仲間へ達しければ、御役義麁相成とて御叱、御役儀被召放閉門しける、