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藩翰譜
八下/相馬
関け原の合戦事終り、天下悉く平ぎて、相馬既に所帯お没収せられ、家亡ぶべきに極る、政宗〈○伊達〉徳川殿に訴へ申けるは、相馬は隻だにも、政宗が年頃の敵也、それに上杉、石田等にくみしたる、一定に候はんには、政宗かれが為にうたるべき時に至て候ひしに、君の仰せ承り、馳せ下る由お聞て、忽に旧き恨お忘れ、新しき恩お施して候ひき、是れ偏に、彼が野心お挟まざりし故にあらずや、且又累代弓矢の家、此時に至りて、永く断絶すべき事、誠に不便の至なり、隻然るべくは、彼が本領安堵の事、御免お蒙らばやと、折に触れて、度々歎き奉りしかば、その事となく、年月お経て後に、本領おぞ賜ふたりける、