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〈弟二〉憲法類編

復讐厳禁の事
第五、六年〈○明治〉二月七日第三十七号御布告、
人お殺すは国家の大禁にして、人お殺す者お罰するは、政府の公権に候処、古来より父兄の為に、讐お復するお以て、子弟の義務となすの風習あり、右は至情不得止に出ると雖も、畢竟私憤お以て大禁お破り、私義お以て公権お犯す者にして、固より擅殺の罪お免れず、加之甚しきに至りては、其事の故誤お問はず、其理の当否お顧みず、復讐の名義お挟み、濫りに相構害するの弊往々有之、甚以不相済事に候、依之復讐厳禁被仰出候条、今後不幸至親お害せらるヽ者於有之は、事実お詳にし、速に其筋へ可訴出候、若無其儀奮習に泥み、擅轂するに於ては、相当の罪科に可処候条、心得違無之様可致事、