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〈第二〉憲法類編
十七
設楽勇外二人の者復讐処刑の事第七十七、六年〈○明治〉十一月十日本省伺、
元柏崎県伺、旧高田藩士族新田貞次郎父に従て、同藩士族寺沢七十郎一家三人お殺す、〈○中略〉永牢に処せらる、国法既に尽せり、設楽兄弟外祖父の為に、之お仇視す可らず、〈○中略〉七十郎変死の後、寺沢氏は無罪にて断絶し、貞次郎は放免せらる、此兄弟痛忿に堪ず、千辛万苦遂に之お擅殺するに至る、抑旧幕の世に在ては、等親血族のみならず、交友知己の為と雖も、復讐雪寃お以て義となし、栄となすの弊風あり、因て維新以降大義名分の御皇張あらせられてより、往々人命の重きと、刑典の擅にす可らざるお知と雖も、此兄弟の如き事、維新の前に在て弊風に泥み、其心隻管讐の復せざる可らざるお誤領す、其情状大に酌量せざる可らざる者あり、且改定律頒行の前に在るお以て、原律に依り本罪に二等お減じ、閏刑に換へ、禁錮三年え処分可致哉、又は減等せずして処断可致哉、別紙口書並刑案相添、此段御裁下お仰候也、(別紙口書並刑案略す)