文政雑記

一

溝口伯耆守〈○越後新発田城主〉家来
久米幸太郎
幸太郎弟 子十八歳
同 盛太郎
子十五歳
板倉留五郎
子四十三歳
右幸太郎、盛太郎、親久米弥五兵衛儀お、文化十四丑年十二月中、於在所傍輩滝沢休右衛門及殺害、其場お逃去候に付、近郷其外巌敷尋候へ共、行衛相知不申候に付、翌寅年三月御帳附御届申達候、然る所其砌者、右兄弟之者共幼少に候所、追々年頃にも相成候間、近郷者勿論、御府内〈並〉何国迄も相尋、見当次第敵討取申度段、此節願出、〈並〉右之留五郎義、弥五兵衛弟に候間、兄之敵討取申度付而者、右兄弟之者幼少之砌に而、休右衛門面体も見覚不申、傍兄弟之者に附添罷出度旨、是亦願出候に付承り届、猶休右衛門討留候はゞ、其場之役人〈江〉相届け可申旨申付候、依之御帳に御記置可被下候、此段以使者申達候、以上、
子〈○文政十一年〉四月廿八日 溝口伯耆守家来
河村初太郎
右公儀〈江〉御届之写
久米幸太郎へ
其方儀、弟盛太郎召連、亡父弥五兵衛敵滝沢休右衛門行衛相尋打果度、依之御暇被下度、願之通被仰付候間、勝手次第出立可致、猶公儀御奉行所御届書相済候に付、右写相渡候、首尾能討留候はゞ、其所之役人江始末相届、掟之通取計候上者、江戸上屋敷、又者此表成共、最寄へ早速可相届候、家内之者江御合力米、其儘被下置候間、致案堵可遂本望候、
但江戸御曲輪内両山等之遠慮、其外右に准候場所者、憚に而可然、猶休右衛門死去之趣、急度相 分候はヾ、慥成証拠お以立戻可申候、
板倉留五郎〈江〉
此度久米幸太郎儀、弟盛太郎召連、亡父弥五兵衛敵滝沢休右衛門行衛相尋、打果度旨に付、御暇被下置度旨相願候之処、右兄弟共一向幼稚之砌に而、父弥五兵衛殺害之所、敵休右衛門面体も不存、其方に於而も兄之仇、傍兄弟之者江附添罷出度旨、願之通奉御聴候処、厚志事に思召、願之通御扶持御引上げ候、御暇被下置候、猶公儀御奉行所へ御届済候義に付、右写相渡候、然る上は不束之義無之、首尾能遂本望候様、万端世話可致候、依之金拾五両被下之、
一肥前忠広之刀 一腰
久米幸太郎へ
一金弐拾両
戊子〈○文政十一年〉五月十五日発足之由