視聴草

初集四

常州復讐文政三〈辰〉年八月廿一日御帳付
大久保加賀守(相模小田原城主)家来
浅田隻助養子
浅田鉄蔵
同人実子 廿一才
同門次郎
十二才
右之者、親浅田隻助其外之者共、去々寅七月、傍輩成滝万助乱心致し手疵為負、隻助儀者、深手に而翌日相果、万助儀者、於其場所、捕押、一件吟味申付候処、全乱心に相違無之、吟味中入牢申付置候処、当二月牢抜いたし候に付、尋申付候得共、今以行衛不相知候、然処牢抜致し候得者、本心に立戻候儀与相察、領分は勿論、御府内並何国迄も万助行衛相尋、見逢次第、親之敵討留申度故、右之者共罷出候に付承届、見合次第討留候上は、其所之役人江相断可申段申渡、御帳へ被付置候様致度、此段以使申進候、
八月 大久保加賀守使者
志谷弥源次
向井弾右衛門組
浅田鉄蔵
養父六助敵成滝万助行衛相尋討果度、依之御暇相願候に付、願之通申付候、勝手次第可致出立候、首尾好討果旨其所之役人江始末相届、掟之通り取計申候上者、帰参可被仰付候間、江戸御屋敷成とも、小田原表江成とも、向寄々々早速可相届候、家内之者共御養扶持三人前、御心付金拾両被下之、
一江戸御曲輪内両山抔は遠慮可致、其外右に准じ候場所者、憚候而可然事、
一万助儀、病気之趣急度相分り候はヾ、慥成事証拠お以立戻り可申事、
家内〈江〉者、是迄之御長屋御入用有之候迄、御貸被成候、猶親類共方へ罷越候儀者、勝手次第可致 候、右之趣、於頭宅申渡之、