視聴草

三集四

深川敵討一件
昨十二日〈○完政十年十一月〉昼四時過、深川六間堀町同所元町迄之間に而、南塗師町権三郎店山崎彦作後家みき外二人之もの、平内へ手疵為負候始末、荒増左之通御座候、
南塗師町
権三郎店
手疵二け所 みき
午四十一才
手疵六け所 同人娘
はる
年十七才
深川森下町吉兵衛店
手跡指南致し候
手疵三け所 浪人 平井仙蔵
年廿六才
一右みき夫山崎彦作と申者、六年已前丑年八月中、寄合神保左京家来崎山兵左衛門、〈並〉同人忰平内世話に而、勝手小役人に奉公済致し、妻子共屋敷へ引移相勤、其後同九月中、家老役に相成、同役崎山兵左衛門〈並〉同人忰平内摂者見習勤いたし、三人に而家老役相勤罷在候処、兵左衛門父子、年来不正之筋有之、取調之儀、同月中主人左京より申付候に付、則取調候上、主人〈江〉申立候処、其儀お遺恨に存候哉、同月廿三日、平内並同人弟川口嘉作外六人に而、夫彦作お殺害致し候お、其節見受候処、みき、はる両人共、右屋敷に而扶助致可遣間、安堵致罷在候様申渡有之候に付、作残念屋敷に罷在候処、翌寅年二月中、永之暇申渡有之候間、引払之已後、兼而懇合平井仙蔵相頼当に罷在候由当月九日用事有之、仙蔵方へ罷越、止宿致候処、右体夫彦作殺害に逢候始末、兼而残念に存罷在、娘はる儀も成長に随ひ、残念がり罷在候処、昨十二日昼四時過、右相手之内、崎山平内儀、仙蔵家前お罷通候お見請候間、討果遺恨お晴し可申と、みき所持之脇指お持出、はる儀は仙蔵所持之刀お持出、右平内へ夫敵又者親之敵之由申罵り、両人に而切懸り候得者、平内儀も渡合せ、夫々打合疵請候所、仙蔵儀者跡より罷越、助太刀致候得ども、町内より大勢罷出被捕押候故、討留不申候旨、申之候、〈○下略〉