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富は、とみ又とむと雲ふ、貨財に豊かなるお謂ふなり、而して其之お有するものお有得人、長者、分限者、若しくは金持(かねもち)とも称す、凡そ富お求むるは、人の本性に出づるも、之お致すに道あり、遇〻暴富お得るものありと雖も、多くは侈侈に流れ易く、往々にして産お破り、或は慳貪不義にして、為に其身お亡ぼすものも亦無きに非ず、是お以て高潔の士は、常に富お賤みて、足ることお知るお以て富めりと為すものあり、今其特殊の例お収錄す、