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太閤記

金賦之事
秀吉公御蔵入領弐百万石余有しかば、金銀米銭あつまりぬる事火しき事なり、かやうに遂年財宝あつまり来たるお施さゝれば、慳貪くづれとやらんにあふよしなり、左もある事もやと、由己法眼に問給ふに、仰いと宜しく侍る旨申上しかば、さらば施してんよとて、天正十三年初秋の比、金子五千枚、銀子三万枚、諸侯大夫等に施し給へり、聚楽総門南のかたにして、台にすへならべ御賦有しが、朝より晩に至て事尽にけり、此後又其沙汰に及び給へり、京童見物して興さめつゝ雲やうは、活溌々地なる事かな、古今に傑出し給へる君なりとて感じあへりき、