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水鏡
下/称徳
同〈○神護景雲〉四年三月十五日に、御門由義宮に行幸ありき、道鏡日にそへて御おぼえさかりにて、世中すでにうせなんとせしお、百川うれへなげきしかどもちからもおよばざりしに、道鏡みかどの御心おいよ〳〵ゆかしたてまつらむとて、おもひかけぬ物おたてまつれたりしに、あさましき事いできて、ならの京へかへらせおはしまして、さま〴〵の御くすりどもありしかども、そのしるしさらにみえざりしに、あるあま一人いできたりて、いみじき事ども申て、やすくおこたり給ひなんと申しお、百川いかりて、おひいだしてき、みかどついに此事にて、八月四日うせさせ給ひにき、〈○又見古事談一〉