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応仁記

乱前御晴之事
応仁丁亥の歳、〈○元年〉天下大に動乱し、それより永く五畿七道悉く乱る、其起お尋るに、尊氏将軍の七代目の将軍義政公の、天下の成敗お有道の管領に不任、隻御台所、或は香樹院、或は春日局など雲、理非おも不弁、公事政道おも不知給青女房、比丘尼達計ひとして、酒宴婬楽の紛れに申沙汰せられ、〈○中略〉又武衛両家〈義敏義廉〉わづかに廿年の中に、改動せらるヽ事両度也、是皆伊勢守貞親色お好み、婬著し贔負せし故也、加之大乱の起るべき瑞相にや、公家武家共に大に侈り、都鄙遠境の人民迄、花麗お好み、諸家大営、万民の弊、言語道断也、