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嬉遊笑覧
十二/禽虫
嘉多言に、獺おかはうそと雲は、苦しかるまじき歟、おそのたはれ尾とよめり、此けだ物尾おふりて、人おばかすどいへり、世俗に偽おうそといふこと葉も、是れより起れりと雲り、今うそつき弥二郎、薮の中で屁おひつたと、童のいふことも、是よりなるべし嘉多言に、おそのたはれ尾とよめりとは、万葉おいへるなんめれど、それは於曾の風流士とよみて、おそは痴鈍の義にて、おおとかなもたがひたり、たはれおは風流士にて、獺の尾にはあらず、されども今の諺は、件の間違ひたる説お取べし、しやばで見た弥二郎といふ事もあり、弥二郎に義なし、権兵衛、八兵衛も同じ、〈○中略〉
薮の中で屁お放たといふは、獺と鼬の混ひたるにやともおもへど、さにはあらじ、人のみぬ所なれば、偽るよとの意と聞ゆ、安布良加須、尻の穴より煙たつな宣、くひあひて術なさうなるみぞいたち、今うそ八百、また万八などいふお、俗は千三といへり、桜陰比事に、今は千いふこと三つも真はなし迚、千三といふ男あり雲々、是なり、