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源平盛衰記

鹿谷酒宴静憲止御幸事
新大納言成親卿は、日比内々相語輩、偸に催し集て、鹿谷に衆会し、一日酒宴して軍の評定あり、〈○中略〉既に晩に及ぶ、庭には用意に持たりける傘おあまた張立たり、山下しの風に笠共吹れて倒れければ、引立引立置たる馬共驚て、散々に〓踊、食合蹈合ひしければ、舎人雑色、馬おしづめんと、庭上上お下へ返て狼藉也、酒宴の人々も、小々座お立けるに、瓶子お直垂の袖に懸て、頸おぞ打ち折てける、大納言見之戯呼事の始に平氏倒れ侍べりぬと被申たり、面々咲壺の会也、康頼突立て、大方近代あまりに平氏多して、持酔たるに、既に倒亡ぬ、倒たる平氏頸おば取るに不如とて、是お差上て一時舞たり、〈○下略〉