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太平記

千剣破城軍事
名越越前守こらへ兼て、本の陣へぞ引れける、〈○中略〉兎角しける其間に、捨置たる旗大幕なんど取持せて、楠が勢閑に城中へぞ引入ける、其翌日城の大手に、三本唐笠の紋書たる旗と、同き文の幕とお引て、是こそ皆名越殿より給て候つる御旗にて候へば、御文付て候間、他人の為には無用に候、御中の人々是へ御入候て、被召候へかしと雲て、同音にどつと笑ければ、天下/武士共是お見て、あはれ名越殿の不覚やと、口々に雲ぬ者こそ無りけれ、