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太平記
二十六
上杉畠山讒高家事附廉頗藺相如事
此時上杉伊豆守重能、畠山大蔵少輔直宗と雲人あり、才短にして官位人よりも高からん事お望み功少して忠賞世に越ん事お思しかば、隻師直師泰が、将軍御兄弟〈○足利尊氏、直義、〉の執事として、万づ心に任せたる事お猜み、境節に著ては、吹毛の咎お争て、讒お構る事無休時、されども将軍も左兵衛督も、執事兄弟無ては、誰か天下の乱お静むる者可有と、異于他被思ければ、少々の咎おば耳にも不聞入給、隻佞人讒者の世お乱らん事お悲まる、