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燕石雑志

白波(○○)、綠林(○○)の故事によりて、盗賊おしらなみと唱へ、みどりのはやしといふは、しかるべし、これお真名に、白浪と書ときは、その義に称はず、真名には白波と書べし、又盗賊お、今俗は、どろぼう(○○○○)といふ、とろはとる也、るとろと通ず、暴は暴戻暴惡の暴なるべし、しかるに世俗は、隻其角が五元集に、泥坊や花の蔭にてふまれたり、といふ句お見て、泥坊と書ものあれど、泥坊は、原来仮字なるおしらず、暴も坊もその仮名ばう也、ぼうと書はたがへり、亦世俗、小賊(こぬすびと)お昼鳶(ひるとび/○○)といふ、唐山に夜鷰といふ怪鳥あり、このものに対すべし、五雑俎雲、茘支果将熟、専有飛盗、縁枝接樹、超捷如風、園丁防之、若巨寇、然瞬息不覚、千万樹皆被漁猟、名曰夜鷰雲々、