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新著聞集
七/勇烈
女、夜盗お禽(いけどる)、
江戸堀江町の米やへ夜盗入り、亭主お切り殺しけるに、妻起出て声お立しかば、盗人逃出、中戸おくゞる処お、追かけ、足お捕へて引けるに、戸はづれて盗人の上に倒れしかば、頓て圧へながら、大音して生捕たりと呼はりしに、人々あつまりて柅(からめ)ける、此ものは、王子の与楽寺の住持お殺せし古著(ふるぎ)長左衛門といふ強盗なり、与楽寺は此女の伯父なり、夫と伯父との敵お、女の身として生捕しは、因果のがれがたき道理にて、さも勇なる振まひやと、誉感ぜざるはなかりし、