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牛馬問

或人の曰、熊坂が事、義経記大全には、義経奥州下りの時、鏡が宿にて夜盗に入、義経に討れし盗の棟梁は、藤沢入道と由利太郎といへるもの也、今世に図画に伝ふるは、此両人お一人にしたる姿なりと見へたり、又義経勲功記には、熊坂長樊と有、異国の長良樊噌が勇猛おかたどり、自長樊と名乗と有、今は樊お範と書たるも有、いづれや是とすべし、曰、熊坂といふもの有、其伝記お詳にせず、扠義経記は、拙ふして且虚誕多し、是お実錄に列しがたし、〈○下略〉