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窻の須佐美

芝の大仏の住持如来寺は、寝間近く、士と見へて、五七人山おつたひ下りて押込(○○)なん気色なり、差掛りの事にて、住持の甥やらん、十五六ばかりなる角前髪の少年、寝て居りしが、聞付て、身繕ひして、向ひ、やゝしばらく戦ふ所に、住持は次の間にありて、随分働くべし、援に鎗お提て居るなれば、手づよくはわれ出て突ふせんと、高声に呼ぶ中に、少年よく働きて、一人に手お負せければ、山へかけのぼりて、引取けるとぞ聞へし、元禄のはじめのころにやありけん、