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燕石雑志

又念秧杜騙お、胡麻(ごま)の蠅(はへ)と名づけたるは、その賊なるや不や見わきがたきお、胡麻の上なる蠅に譬たる也、亦少女お豪奪して、これお略売するものお、世俗かどはかし(○○○○○)と唱て、勾引の二字お当たり、乃唐山にいふ、拐契の賊也、和訓かどはかしとは、その門お迷して、他処へ誘引の義ならん、人の人に誑るゝお、ばかさるゝといひ、狐狸の人お魅するお、又ばかすといふ、ばかすは馬鹿にする也、馬鹿は秦の趙高が、鹿お指て馬也といはせし故事なるよしは、世俗もおさ〳〵しれるなるべし、これら無益の弁なれど、筆の走るまゝに注しつ、