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古今著聞集
十二/偸盗
博雅三位の家に盗人入たりけり、三品板敷の下ににげかくれにけり、盗人帰り、さて後はひ出て家中お見るに、残たる物なくみな取てけり、篳篥一お置物厨子に残したりけるお、三位とりてふかれたりけるお、出でさりぬる盗人はるかに、是お聞きて感情おさへがたくして、帰来て雲やう、隻今の篳篥のねお承に、あはれにたうとく候て、悪心みなあらたまりぬ、取所の物どもこと〴〵くに返し奉るべしといひて、皆置て出にけり、昔の盗人は又かくゆう成心も有けり、