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古事談
三/僧行
此安養尼上之許、強盗乱入、房中に有ける物皆捜取出了、尼上紙衾計お被著けり、小尼公〈安養尼婦尼也〉走廻て見ければ、かれ色の小袖お一落たりけるお取て、是お落て候ける、たてまつるとて持来たりければ、尼上雲、其も奪取之後は我物とこそ思覧に、主の心不行覧物おば、争可著哉、遠不行以前に早可返給雲々、仍小尼公走出門、やヽとよびかへして、是お令落給たれば、たてまつらんと雲ければ、強盗等立帰て暫案じて、悪く参候にけりとて、所取之物等併返置て退散雲々、〈○又見古今著聞集十二〉