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貞丈雑記
二/人品
一傾城といふも遊女也、今の世のごとく、三所にあつまり居らず、所々にあり、大名の家などへもめし寄て、酒宴の興お催し、歌ひ舞ひ、酌などにも立し也、傾城、白拍子に銚子の渡し様、折紙など遣様、馬など引き遣す様などの事、旧記に見えたり、唐にて傾城といふは、遊女の事のみにかぎらず、総て美女の事お雲、うつくしき女は、人に城おもかたぶけさせ、国おもかたぶけさせる物也とて、傾城とも傾国とも雲也、傾はかたぶくると雲字にて、ほろぼす心也、