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洞房語園
異本拾遺
新町河合権左衛門といひし者の内に、雲井とて局の女郎あり、彼に其頃二刀の達人宮本武蔵が逢馴て、同町の揚屋甚三郎が許へ折々通ひける、完永十五年の春中、肥前の島原一揆起り、西国御大名仰付られ発向の砌、宮本氏も黒田家の幕下へ見廻として、彼地へ赴くとて、雲井に暇乞のため、甚三郎が許へ来り、揚屋にて発足の用意おしたり、