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一目千軒
鹿恋(かこひ)
此女郎、太夫天神とくらべては、大に詫たる体也、ゆへに世人さびしき人お、お茶たてらるといふより、かこひといふ、むかしは文字も囲とかきし也、物お閑にて、深山にて小男鹿お恋るこゝろより、中比鹿恋といふ、かの声よりして鹿のくらい(○○○○○)と定めたり、むかしに別はありし、今は太夫に付なりといふ説非なり、引舟とかこひとは別也、かこひはかうし女郎の内なり、価は拾八匁にて貰は八匁なりしに、延享三寅年やみて、安永二巳のとし価おあらためて、鹿恋始る、価は委く奥に記す、
引舟の事
引舟といふは、太夫につきて行ものなり、太夫は大船に表し縛(しばる)る舟のこゝうにて、ひき船の名あり、これ客のつかひもの也、客附のとり八、皆此引舟の役也、依て別に価なし、