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世事百談
遊女総角が世代
世の口ずさみに、高雄(○○)七代、薄雲(○○)三代総角(○○)一代といふことあり、高雄は古人の考ありて、世代も事蹟もいと明なり、按ずるに、総角は一代にはあらず、両巴扈言〈享保十五年〉に、三浦屋四郎左衛門内に、 あげまきあり、又享係十九年の細見に、 あげまきあり、元文五年の細見に〈かうし〉あげまき、完保三年の細見にはあげまきなし、その後延享四年の細見に〈かうし〉あげまきあり、延享五年の細見、完延二年の細見に、あげまきあり、宝暦四年 あげまき、〈しのぶげんじ〉同五年の細見に、 あげまき〈しのぶけんじ〉とあり、同八年に三浦の家絶えたり、これによりておもへば、両巴雇言より元文の間に見えたるあげまき一人にて、延享四年より宝暦五年までお、又一人ともおもはるれば、これにて二代はありとしられたり、これより先正徳四年に、助六の狂言おはじめてしたる時に、揚巻の役玉沢林弥なり、享保よりはやく已にあげまきあれば、すべて三人はありともおもはるゝものから、猶そのくはしきことは後考お俟つのみ、