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拾遺古徳伝絵詞

第六段
室(○)のとまりにつきたまひければ、遊君どもまいりあつまりて、往生極楽のみち、ふれも〳〵とたづねまうしけり、むかし小松の天皇〈光孝天皇これなり〉八人の姫宮お七道につかはしけるより、遊君い、まにたえず、或時天王寺の別当僧正〈行尊〉拝堂の為にくだられける日、江口神崎の遊女、舟おちかくさしよせければ、僧の御舟にみぐるしくといひければ、神楽おうたひいだしはんべりけり、有漏地(うろじ)より無漏地(むろぢ)にかよふ釈迦だにも羅睺羅(らごら)が母はありとこそきけと、僧正めでヽ、さま〴〵の纏頭したまひけり、