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嬉遊笑覧
九/娼妓
春毎に街に桜お植(○○○)ることは完延二年なり、然るに徒流雲、此廓に桜植る事は、完保三丙年はじめて思ひ付しことなり、其始中の町の茶や軒お並て、みせの前へ石台桜お出し度段願立、其通り被仰付、翌年より桜おうへてからの石台ばかり出し置、其翌年より中の町の真中へ植る事とはなりぬと、浅草寺なる奥山の茶屋の主、吾妻や五兵衛といふものゝ物語なりといへり、こは年号干支誤写ある歟、もとより誤説なるか、〈完保三は癸亥、もし辛酉ならば元年なれど、完保にはあらず、〉完保二年己巳歳なり、此時堺町中村座にて、助六狂言に此体おうつし、殊更に賑はしかりしとかや、其浄るりお、廓の家桜といへり、