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嬉遊笑覧
九/娼妓
轡は傾城屋の異名なり、箕山なども名目の来由おしらずといへり、或雲、原三郎左衛門は、太閤の馬の口取なれば、それが取立たるによりてしかいふ、又一説には、伏見の遊女町十文字なるといふともいへり、三郎左衛門、馬の口取といふこと慥ならず、又伏見などよりいひ出て、広くわたるべき理もなし、信長記に、織田右馬助といふもの、人の賄おとりければ、〈憑お再三取申けるに〉信長卿、銭ぐつわはめられたるかうまの助人畜生と是おいふらむ、と一首の狂歌お遊ばして送られけるとみえたり、是欲心のみにて、漢土にいはゆる亡八の義なり、金銀お贈るお轡おはむるにとりていへる名なり、