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洞房語園異本考異

本説〈○異本洞房語園〉に、元禄年中より局といふ事廃り、総じて吉原の古実ども取失ひしと歎きてあり、其頃より散茶造りになりたるか、当時の遊女屋の造り、どれも〳〵散茶造りなり、むめ茶作りさへ廃してしる人希なり、近き頃まで、江戸町一丁目巴屋源右衛門が家作り、むめ茶作りにて有りしが、表総格子にして、〓は壁の方と跡尻の方と、二方に女郎並び居て、籬の方にぎう同座す、其籬と表の格子との間に、三尺ほど明て、落間有り、ぎう台より出入す、偖客人格子にて女郎お見立て呼ぶ時に、ぎう落間より来りて、客に応対して、客人おば其格子の並びに木戸有て、夫より誘引するなり、客お直に〓より上る所もあり、又路次よりすぐに勝手へ入れ、当時のごとく二階へ上る家も有ける、家々に依て籬の外、そのぎう台昔は三尺に六尺なりし、