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東海道名所記

これ傾城町なり、世に島原〈○京〉と名づく、〈○中略〉さて本町に入てみれば、隔子の内には、金屏風はしらかし、莨菪盆に真刻、匂ひたばこなんど、金銀のきせるとりそへ、池田炭お富士灰に埋み、時々伽羅梅花侍従なんど、おぼろにくゆらかし、〈○中略〉又はし傾城は、蜂の巣のごとくに、めんめんにちいさきつぼね、ひとつ〳〵おかゝへて、門口には、なめし革にてとぢたる、青のうれんおかけ、奈良火鉢、又は目のつぶれたる摺鉢に火おいけ、雁首のかたくじけたるに、たばことりそへ前におき、つくねんとして居るもあり、〈○下略〉