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嬉遊笑覧
九/娼妓
ぎうは散茶みせより起りし名なりといへり、洞房語園に、待乳問答といふ文沢氏何某が遊女の名よせの内に、一座に花おちらすべし、しかうして、花車頓に廻り、牛すみやかに走り、女郎よくなびくと有、これも車よりいひ出しことゝみゆ、然るお原本洞房語園に、風呂屋の僕の脊むしなるがありて、きせるお不断腰にさしたる形、及の字に似たるより始まれりといへるは非なるべし、五元集拾遺十及図序雲、往昔異邦の仏鑑禅師、十牛お図して、人間迷悟の間おしめされたり、其書お狂言にし取て、牛は声音妓有なり、又及ともゝてあつかふは俳なればなり、援に図お画讃し侍て、笑お万世に残すもの、晋其角といへり、是又及の説おとれるは誤なり、