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用捨箱

禿の菖蒲打
端午の日の印地打一変して、いんじゆ切となり、正保慶安頃は、此日専童のいどみあらそひし事、昔々物語にくはし、又其いんじゆ切止て菖蒲打となれり、中古風俗志〈明和元年老人の筆記〉に、〈○中略〉今は絶てなしといふ事あり、さて此菖蒲うち絶たる後も、吉原の禿にのみ残り、彼節句の日、江戸町方京町方と立別れ、待合の街に出て打合お、見物群集したりしが、あやまちて疵おかうぶりし禿もありしより、遂に止たりといふ事、平道〈揚屋町俳人〉が彼地の事お集し雑記にありしが、予〈○柳亭種彦〉写しとめざるさきに平道没して、今もとむるに便なし、