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近代世事談綺
一/衣服
女前帯
明暦万治のころより起る、京祇園清水辺の茶屋女、参詣のあまたある時は、帯のとけたるおむすびて、うしろへまはすいとまなく、前にてむすびたるまゝにて、茶酒の給仕おしたり、一人より二人へうつりて、いつとなく、島原の傾城、あるひは茶屋遊女、前にてむすぶ、京の町女、又田舎にわたりて、世間一統に此風おまなぶ、大きなる略義なり、今以御所方あるひは、武家の奥方にて、老若ともに前帯にする事曾てなし、