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嬉遊笑覧
九/娼妓
素見(〇〇)、ぞめき(〇〇〇)、万葉に、友の騒(そのき)、砂石集に、世間公私のぞめきなどみえて、古言なり、和訓栞に、そゝめく事に今もいふなり雲々とあり、因果物語に、七歳に成ける子、此ぞめきのまぎれに、水門にはまりぬ、今はそゝる(〇〇〇)ともひやかす(〇〇〇〇)ともいへり、そゝりは言塵集に、そゝりとは、子おいだきあげて、そゝり〳〵といふは、此こゝろなり、俗にいさましくすゝむことおもそゝると雲、今昔物語に、幼き児のそゝりといふことするやうにして雲々とあり、ひやかしは、惡る口きゝなどして、興おさますなり、さますとは、ものお冷すことにいへば、やがて冷かしと雲たりとみゆ、或人雲、むかし山谷にはすきかへしの紙お製する者多く、それが方言に、紙のたねお水に漬おき、そのひやくる迄に、廓中のにぎはひお見物して帰るより出たる詞といへり、いかがあらん、