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嬉遊笑覧
九/娼妓
隠れて色お粥ぐ者お、漢土にも後世娼妓天下に満つ、両京の教坊官其税お収むるお脂粉銭と雲、郡県に隷する者お楽戸と雲て、使令に随ふ、唐宋の代、官伎おもて酒宴の佐とす、明の代になりても然ありしが、宣徳の初めに至りて、始てこれお禁ぜられて、公庭に出ること絶たりといへ共、ます〳〵里閉に充牣して、猶これおほやけの妓女なり、昔晏子斉国お治るに、女閭七百お作り、其夜合の資お徴て、軍国の助とす、これ是法の作俑なり、官に隷せず、家居して姦お売る者土妓と雲ふ、俗に私窠子といふ、これ又数ふるに勝へずと雲り、板橋雑記に、楽戸は教坊司に統たり、司には一官ありてこれお主る、衙署あり、こゝの役人は、客お見ても礼せず、