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好色一代男

木綿布子もかりの世
今男盛二十六の春、坂田といふ所に始めて著きぬ、〈○中略〉勧進比丘尼声お揃へて唄ひ来れり、是はと立よれば、かちん染の布子に、黒綸子の二つ割前結にして、頭は何国にても同じ風俗なり、元是はかやうの事おする身にあらねど、何時比よりおりやう猥になして、遊女同前に相手お定めず、百に二人といふこそ可笑しけれ、あれは正しく江戸滅多町にて忍び契おこめし、清林がつれし米かみ、其時は菅笠が歩くやうに見しが、早くも其身にはなりぬと昔お語る、