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蜘蛛の糸巻
かくし売女
此けころといふ名義は、此比浅草、両国、橋町、石町辺にてころび芸者と唱へ、百匹づゝにてころびねの枕席したるものありしゆえ此名あり、けころの名は蹴転ばしの義なり、此けころ切二百、泊りは客より酒食おまかなひ、夜四つより二朱なり、一軒に二三人づゝ昼夜見世お張り、衣服は縮緬お禁じ、前だれにて必半畳の上に座すなり、〈案ずるに、水茶や、茶汲女の姿なりつらん、〉此売色大方仏店より軒お並べて、四五十軒ばかりありつらん、是おのれが目睫おいふ、けころの姿、絵にも団扇にも売り出だしたるお、余一柄お蔵す、今は珍奇なり、