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都の手ぶり
よたか
沖つ舟よるべさだめぬお、うかれめとよび、家にありてまらうどおまつおば、くゞつとぞよびつけたる、これはさるたぐひにはさまかはりて、家にしもあらず、舟にしもおらず、たゞ大路のくまぐま、あやしき木のもとなどおたづねもとめて、しばしのねやとはさだむるになむ、京なにはにはさうかといひ、あづまのかたにてはよたかとぞよぶなる、さるは、ひるはふし夜は行きて鳴くとかいへる、ふるきふみのこゝうもて、なづけそめたりけむ、日いるころよりよそほひこちたく物して、かしこへとていそぐ、むかしはもめんのくろきお衣とし、しろきお帯となして、かしらおばたのこひにつゝみていでたちしお、今様はさるまねびおもせず、常ざまの市人のめのごとく見まがへありく、わかきはまれにて、四十より五六十ばかりのふるおうなぞおほかる、〈○下略〉