[p.0915]
嬉遊笑覧
九/娼妓
一代男、諸処おいひたるに、四谷新宿おいはず、其頃はこゝに飯盛女(〇〇〇)などはなかりしにや、誰袖海、護国寺門前音羽町、四谷の新宿、板橋、立川、千住の色茶屋、堺町の裏筋、あたごの下、八貫町の比丘尼、是も百に三人より一人一角まで有、〈四谷新宿は、享保五年故有て廃せられて、五十三年お経て、明和九年願出るもの有て、又古来の通りはたごや五十二軒、飯もり女百五十人出来たりとぞ、帰橋が安永九年の草子に、今岡場所の多きこと、さつまいものふえたるごとく、中に取わけ賑はふは、北と東と南なり、鼎の如くといひたるが、次第に西方盛なれば、碇の如く争ひて雲々とあるは、四つ谷の後に、はやり来つること知べし、〉