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近代世事談綺
四/歳時
住吉遊女田植
堺乳守の遊女、住吉の御田おうゆる事は、いづれの帝の御時なるか、宮女に惡瘡の愁ありて、終に宮中お出て吟ひ、乳守に来り、遊女の家にやしなはる、此病お住吉の神にいのる、ある暁神託して、諸人に面おさらし、賤しき業おなすべしと也、よつて御田植女にまじりて、毎年これおつとむる、惡瘡こと〴〵く愈て、顔色元のごとし此例お以、乳守の遊女、植女となるのはじめ也、又遊女局などの暖簾に、紫の耳お付る事、乳守の外に出ず、これみな故縁によるといふ、