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松屋筆記
六十六
若気(にやけ)並男娼(かげま)
今世のかげま、垂髪の事お、むかしは若気といへり、若気勧進帳あり、文明壬寅の冬の作なり、其文に、平朝臣井尻又九郎忠鋤、謹白か僧喝食若衆言雲々、また滑稽詩文一巻あり、男色の詩多し、江島児が淵に身お投し白菊丸が歌も載たり、男色の事、海人藻介に見え、から国には、竜陽君弥子瑕おはじめ、史記漢書に佞幸おほかり、後に男娼といふ、癸辛雑識にくはし、若衆お垂髪といふは、玉海、吾妻鏡に見ゆ、詩経には総角とあり、催馬楽にあげまきの歌ありて、ころびあふよしいへるは男色なり、今にやけ男などいふは、男娼(にやけ)めきたる男のよしなり、
志田草子〈十丁お〉に、君もにやくに御座あり、我等もわかき者なれば雲々、又〈四十丁お〉御年もにやくに御座あるが、いづくよりいつかたへ御とほりあるぞと問ければ雲々、