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松屋筆記
六十六
男色おおかまと雲ふ事
滑稽詩文の詩に、無限心中蔵弥露、灯前一夜涙如雨、他時有時可焦思、塩竈烟兮松島浦雲々、此詩松島に待とよせ塩竈におかまおよせたるなり、後世男色おおかまといふも縁源あり、
男色密道若道
男色の事お、密道若道などいへり、若気勧進帳に、三国有密道、厥用雖同厥名各別、支那謂之押磚、身毒謂之非道、扶桑謂之若道、通用于三国、真俗共賞玩矣、殊本朝者、桓武天皇御宇、従弘法大師此道専盛、而京鎌倉之諸五山、大和近江之四け大寺、其外都鄙諸宗、公家武家之人、雪月為便、詩歌為媒雲々、また剰以密道容易流布、樵蘇女子小児諳之党之雲々、男色は周の代に弥子瑕あり、漢に郵通董賢の類あり、淮南王有愛好童年、その外挙に徨なし、男唱といへるは、男色お売者にて、本朝のかげま也、