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塩尻

一文明の比、或人他国に行事侍りし、年比らうたく思ひ侍りし童の、やまふに煩ひて、残り侍りしが、送りの詩に、
君去往他郷、吾今臥病床、訃音如露来、莫惜一炷香、
となん雲ける、客中に彼童はかなくなりしかば、再び人に交はらずして、修行しけるとかや、哀れ也し事也、賢按、此時代男色の流行しける事如此也、