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塵塚談

歌舞妓河原者の曲芸お以て、事業とし糊口する者お、男女ともに芸者と通称す、江戸中に二万人の余これ有よし、女お羽折といふ、親兄弟おやしなふも多し、二万人余の中、上手高名なるものは、一け年に束修弐百両程づゝも取よしなり、されど倉廩お持しものは一人もなし、浅草辺にて、きねや庄次郎といふ者一人のよし、これは親庄次郎建し倉廩なりといふ、うへもなき賤き業にして、弟子も皆無頼放蕩もの而已の寄合なれば、くらのなきも理り也、