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嬉遊笑覧
九/娼妓
今芸者と雲ふ女は昔の舞子の名残なり、又はおり芸者とは、深川のげいしやより雲ふ、明和七年の冊子辰巳園芸者お喚むと雲ふ処、はおりにしましやうかといへり、もと女共はおりお著たる故なり、豊後節はやりて此風起れり、下手談義、ぶんごかたりのことおいふ処、あまつさへ女があられもないはおりお著て、脇差まで差た奴も、折ふし見ゆるぞかし、昔は堀の舟宿の女房ばかりぞ羽おりおきける、今は大てい小家の一軒も持たる宿の子も、女のあるまじき羽織きせたる親の心おしはかりぬ、みな是愚人のするわざぞや、〈昔女郎にも男に作りたる有り、其余風なり、〉明和二年川柳点、おめかけもうきふしんこお近所の出、その頃橘町に女芸者多くありし故なり、