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瞽官紀談

無官の瞽お初心(しよしん)と雲
一つお半(はん)の打掛(うちかけ)と雲 一つより何一(なにいち)、城何(じやうなに)と名おつく、
二つお丸(まる)打掛と雲 三つお化遷打掛と雲
右一つより三つまでお打掛と雲〈初心打掛は撿挍(礼無し、勾当へも礼無しと雲、〉
四つお衆分(しゆぶん)と雲、又座入(ざいり)ども雲、打掛お不歷して直に衆分になるお粒入(つぶいり)と雲、〈衆分より撿挍へ礼有、御前様(おまへさま)へ何一と申まする者、袴ばかりで御礼申ますと雲、〉
四より十六までは、紫の菊とぢ付たる長絹お著す也、〈長絹ち著たる時は、袴ばかりとは不断〉
五つお萩上主曳(はぎのじやうしゆびき)と雲 六つお一度中老(いちどのぢうらう)曳と雲
七つお一、度の晴(はれ)と雲 八つお二度の上主曳と雲
九つお二度の中老曳と雲 十お二度の晴と雲
十一お三度の上主曳と雲 十二お三度の中老曳と雲
十三お三度の晴と雲
右四つより十三までお衆分と雲、不令著白袴、袴の腰板ばかり白き帛お付て著す、又平生常の袴、又羽織は、四つより十六まで著すと雲、
十四お四度のさいしきと雲、采色と書と雲、 十四より十七まで四度の官也、白袴お著す、
十五お四度の上主曳と雲 十六お四度の中老曳と雲
十七お四度の晴と雲
至十七お化遷勾当と雲、衣お不令著、長絹の菊とぢお皆とりはなちて、背の身柱(ちけ)に一つ付る也、菊とぢは若輩の附るものヽやうに意得て、如此はなつ事戸なりたるが所以に、杜鵑の勾当と雲は、隻一声、おとづるヽと雲心也と雲、〈礼は御前様(おまへさま)へ名字座頭御礼申ますと雲、撿挍の挨拶に、座頭(さと)の房とも、又は名字おもよぶなり、〉十八お百曳と雲
勾当の採色也、十八より四十七までお勾当と雲、〈礼は、御前様へ何一御礼申ますと雲、〉衣沙門帽子お著す、沙門帽子は撿挍の所冠、燕尾の如にて製異也、
十九お一度のしかけと雲 二十お二度のしかけと雲
右十九と二十とは贈物(おくりもの)のしかけ也
廿一お贈物の晴と雲 廿にお一度のしかけと雲 廿三お二度のしかけと雲
右廿二と廿三とは掛司(かけづかさ)のしかけ也
廿四お掛司晴と雲 廿五お一度のしかけと雲 廿六お二度のしかけと雲
右廿五と廿六とは立寄のしかけ也
廿七お立寄(たちより)晴と雲
廿七立寄の晴おして、廿八より四十六七と漸次お不刻して、一度に四十八にする也、此間に一度の大座(たいざ)、二度の大座、二度のこん〳〵しやうお引はらし、総別当に任ず等雲ふ事有、大座より撿挍の代りおする也、
廿八至四十七、旧聞毎階有其号、可尋、 四十八、召物お引はらひ、撿挍に任ず、
四十八より五十にまでお撿挍と雲、総晴お引はらし、五十二の官にて収まる、
四十九より至五十一、毎階可記、
撿挍の衣の色、好む処に従ふ、旧は緋色おも著たるお、総撿挍お所置より、緋色は総撿挍の物となれり、燕尾お冠る也、
右一つより三つまで打掛の間は、座頭と不令称、房と雲て何一房と呼ぶなり、 四つより十六までお座頭房(ざとのぼう)と呼ぶ、十七より化遷勾当房と雲 十八より四十七までお勾当房と雲 四十八より五十二までお撿挍の御房と雲
又四度お在名と雲、勾当お中老衆と雲、撿挍お上衆(じやうしゆ)と雲、