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嬉遊笑覧
附錄
又同書〈○徂来政談〉八撿挍の跡目御番に入らるゝ事謂れなき事なり、其始め東照宮御小性盲目に成たるお、撿挍に仰付られたるより事起るといふ、夫は元来侍なれば最のことなり、其已後御扶持お下されたる撿挍の跡までは濫吹なり、座頭は其弟子より金お取て、夫にて渡世する者なれば、畢竟乞食に似たる者なり、御扶持方下され、御側近く召仕はるれども、隻坊主などの格なるべし、紫位お著する故五位なりと思ひて、不学なる御老中などの両番へ入らるゝ事にもたる成べし、出家の紫衣おも官位とおもふは文盲なることなるべし、紫衣いづれも平僧にて、衣の色お御免ありといふ迄の事なり、撿挍の紫衣はまして夫とは間のあることなり、撿挍勾当といふ名も官位にあらず、高野の撿挍も平僧なり、勾当といふは、何にても事お取八く事なり、勾当内侍といふも、内侍にて事お取八く故の称号なり、天明五年御触書、盲僧は武家に限り、青蓮院支配たるべく候、盲人は百姓町人に限り、総錄の支配に限り候事、