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当道要集
科行次第
一大科千匹、中科五百匹、小科三百匹也、勾座は撿挍の中科お大とし、小科お中とし、小科は百匹たるべき事、
一請暇落は、撿挍の小科三拾分たるべき事、他准之、
一於当道盗人官人の女お犯したる輩は装束焼捨、或は不座、或は石こずみ、或はふし付、或は簀巻、或は首お可切事、
一舞廻猿楽等、賤筋目の者の家へ至、酒呑みたらんずる者は、装束お抜せ可為不座、但し自身力顕さば過失に落可宥事、右之者共の当道の家へ出入は不苦、当道よりは盃もさすべき事、
一舞々猿楽の賤き筋有者の芸したる跡不改して、芸したらん当道於有之者、可為同前事、一舞々猿楽類の賤筋有者の家屋敷直に買取輩は、可為同前事、
一二季の塔不勤輩、右可為同前、但装束は可為用捨、仮月経たりといふ共、臨時に塔お勤ば可為帰座事、
一参加せざる輩、可為同前事、
一他の弟子お作知、紛かしとらん輩可為同前事、
一同宿堅間に、そくたく出したる者、同そくたく取たる者、可為同前事、
一米の取遣六十日の日数お違たらん輩は、官途の高下によらず大科に可落、過失に落たりといふとも、日数延引有べからず、延引あらば可為不座事、
一米の取遣法度背ば大科に落し、其上にて十二け月出仕可押留事、但右之法度職事として背ば扶持放すべし、
一座中の外へ米預たらん輩、可為同前事、
一猿、食たらん輩、大科に可落事、
一召物職開等に法度背たる輩、可為同前事、
一京の口々へ番お付登衆奪輩、可為同前事、
一他門の公事取持たる輩、可為同前事、
一万事依怙最負私したる輩、可為同前事、但品により不座にも可申付也、
一在京の撿挍勾当の家にて、自身商買したる輩は可為中科事、
一出所不慥琵琶売買したる輩、可為同前事、
一過口したる輩可為中科、返答したる輩可為小科事、
一慮外狼藉の輩は、時品により可申付事、一下馬の法度背ば、四度、中老は可為小科、四度以下の者は一け月装束可押事、但高官の人は請暇落に准ず、
一塔召物、小寄合にも、猥の作法在之輩は座お立可申事、但上衆は請暇落に准ず、
一塔召物に式事、火の改、身の清め、不沙汰なる時は、其日の出仕可押事、
一弟子同宿我儘にほうし致ば、其学文所坊主より可改事、但総撿挍無違乱於請取、過失請暇に准ず、一当道芸する時の作法破らば、同宿たらば一礼申べし、高官の人には装束可抜事、
一官位の為、諸旦那より得勧進お出世せざる輩、可行死科事、
此外之科は、時々評議次第可申付者也、
完永十一年三月五日 職 小池撿挍凡一 二老 天野撿挍 祐一
三老 小寺撿挍温一 木村撿挍 良一
村田撿挍甚一 波多野撿挍孝一